tochioageの日記

基本的に本・コミックのエッセイとお題で書きたいわ。

「ロボ・サピエンス前史」上・下     (株)講談社  2019.8.23

しまとら こと島田虎之介による遠・近未来コミックの読後です。上巻7話下巻6話から

なりラストで雄大な世界を暗示します。少しストーリーを紹介しましょう。

咥えタバコの女探偵(ロボット・サルベージ屋)が大富豪から妻だったロボットの捜索

を依頼される。今の世の中、少子高齢化で移民だ機械だと言われているが機械に舵を切

った社会で、至る所にロボットが林立むしろ乱立している。モノクロの際立つノスタル

ジックな画で未来を描いて不思議な感じがする。新鮮でもある。彼女には相棒がいて四

角い部屋で四角い箱・pcを睨んでいる、相当サイボーグ化した人間いややっぱロボット

か。女探偵の担当はクラシックに足で稼ぐ捜査と実力行使・アッパーで探索は順調に進

む。探偵が捜索の末に見つけたものは・・。機械に取り囲まれた中にかぼそげに人の純

な心がある。しばしば時の経過がいきなりの老け顔で表現されるがうろたえてはいけな

い。この作品は長大な時間を扱っている。

彼・・さすらいのお助けロボット。救援を受信しては走って泳いで潜って飛んで現場に

駆けつける。ベコの出産、独居老人の屋内の修繕、建設現場の作業員、庭師、漁師、絵

画教室のモデル、バーテンダー、沖縄の村祭りの舞台で踊りの相方を努める、小学校の

教員などなど仕事を問わない。ダウンロードして何でもござれの八面六臂の活躍で私に

も早急に設置して欲しいと思う。彼はかつて彼女だった。その女の子は服を選ぶ感覚で

彼/彼女を選んだのだろうか。姉妹のように双子のように何をするにも一緒だった。お

嫁に行くにもふたりで行ったのだ。昔、良家のお嬢様が嫁ぐ時お手伝いさんを連れて行

ったというけれど。彼/彼女も花嫁姿であったので・・この世に生まれて人には親や配

偶者にもいかんともなし難いエリアがあるということか。人間は先に去るので、持ち主

の許可があればフリードロイドとなって性も選択できる。それで彼女は彼になり世のため人のため日夜働いている。

総じてロボットたちは人間に誠実でどこまでも尽くしてくれる。「ターミネーター」の

ようにAIがある日突然目覚めて人間狩りを始めるなどとは別次元だ。彼らがトレースす

るようにサポートするのは人間の日常の生活面だけではない。

マリア、クロエ、トビーは超長期耐用型ロボット名ずけて時間航行士(タイムノート)である。開発者はわが国わが社の女博士(女性多いわ)。マリアはオンカロ・・地下深

くに埋められた核廃棄物を詰めた超合金容器を25万年にわたって管理する。クロエ、

トビーは外宇宙探査ロケットに乗り込み人類の居住可能な惑星を探査しデータを持ち帰

る。帰還は6000年後の予定である。別れに際して博士は2名/体に何事か伝えた。

マリアの任務終了まで、25万年間の時の流れの描写がおかしくも凄まじい。並の理系知

識ではこうはゆかないのではないでしょうか。クロエ、トビーのロケットは小隕石の直

撃を受けて大破した。地球の人間人口は三千万になっていて自らドーム都市に引きこも

って暮らしている。ロボットたちはほぼ100%確実な未来予測を可能にして人類の未

来に見切りをつけ地球を離脱する決意をした。でも人間が滅び去るまで文明的な生活

(生存可能ではありませんよ)を送れるハードウエアを残してくれると。どこまでも優

しいロボットたちである。

ロボットとて物質的存在であるから錆びて壊れて終わっていく。作中では次第にデータ

としての存在となって動き回る。地球を離脱するのは地球にいる/いた全データであ

る。彼らはどこに行って何をするだろう。ビッグ・バンでも起こすだろうか。ここで私

は考える。人間にもデータ・・意識がある。この世を去ったらどうするだろう。

「ロボ・サピエンス前史」を手にしたころ似たタイトルの本が目についた。「ホモ・サ

ピエンス全史」である。読む体力気力ともなかったので中田敦彦youtube大学で間に合

わせてしまった。「ロボ」はどこまでも柔らかい真に癒しの作品であった。